星に願いを メイドにカチューシャを
――ピッ ピピピッ
――パシャッ
――ピピピッ
――パシャッ
珍しく余裕を持って登校することができた、ある春の日の朝。
誰もいないはずの教室の扉を開けると、1人の男の子が机に腰掛け、ファインダーを覗いていた。
片足を立てて机に座る様子は、本当なら行儀が悪い格好のはずなのに、少し上体を後ろに反らせ、身体を丸めてうまくバランスをとりながらカメラを構える姿は真剣さそのもので、思わず見入ってしまう。
涼しい風が舞い込む日陰の静かな教室に、デジタルカメラのシャッター音がよく響く。
撮りたい風景をおさめることができたのだろうか、誰かが教室に入ってきたことだけは気づいていたらしい彼は、首だけこちらに向けたかと思うと、すぐにまた、窓の外に視線を戻してしまった。