レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
男の人はティッシュをゴミ箱に捨てただけのような、あっさりとした顔で部屋に入ると、ドアを閉めようとした。
「そんなぁぁぁ!ご慈悲を!せめて歌わせてぇ!」
「ええい、帰れ!というか、真面目にやれよ!」
「真面目ですとも!大真面目です!スターになりたいんですっっ」
ここで諦めるわけにはいかない。
まぶたの裏にはあのプロモーションビデオが再生される。
あの挑戦的な眼差し。
あたしは、あの世界に行くためだけに今日まで生きてきたんだ。
必死でドアを閉めようとする力に逆らって、転がった体制のまま馬鹿力で必死にドアの間に手を挟む。
手を足で蹴られても、全くめげない。
腕の一本二本折る覚悟はしてるわ!
「ぐっ…離せ…つってんだろ、っ…!」
「う、歌わせろ…つってんのよっ…!」
「こんの…馬鹿力っ…!!」
しかし若いお兄さんの力に、女の子が適うはずもなく。
約2分の戦いのあと、あたしは泣く泣く敗北した。