レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
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「…いーの?しょーご」
アキトに駆け寄っていくチアちゃんの背中を見送りながら、あくまで興味のなさそうに目を背けるしょーごに向かって、聞いてみる。
ワタルは一人で楽しそうに歩いているから、気にしない。
「なにがだよ」
予想通りの、不機嫌な返事。
僕は笑いをかみ殺して、言った。
――楽しくてたまらない、というのが、顔に出ていなければいいけど。
「あんまり冷たくしてたら、取られちゃうよ」
「くだらないこと言ってんなよ」
「はいはい」
相変わらずの、態度。
だけど、よく見るとわかる。
1年、そんなに長くはないけど濃厚な付き合いをしてきた。
最初は本当にツンツンしていて、天才だけど人をあまり寄りつけない雰囲気だった。
少しずつ表情が出てきて。
――ここ数週間で、それはもっと豊かになった。
相方だから、わかる。
それはしょーごの創る音楽によく出ている。
林田さんだって、それを本当はとてもよく分かっているんじゃないかって思うんだ。