レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
チアちゃんは、よく笑う。
林田さんやしょーごに何を言われても、こき使われても、いつもポジティブで明るい。
――最近、僕も頻繁に朝早くに事務所に向かうようになった。と、自分でも思う。
昨日の朝だったか。
「…あ、ケイくんおはようございます~」
僕が事務所に着くと同時に、チアちゃんが奥の部屋から出てきた。
金欠だという彼女は毎日、事務所に寝泊まりしている。
いつも、短く切った黒い髪に少し寝癖が付いている。
「おはよ」
「あ、もしかしてそれ、作詞ノートですか?」
「これ?」
僕は手元に持っていたB5のノートを見せて、「そうだよ」と頷いた。
チアちゃんはこういうアイテムに目ざとい。
さすが、アイドルを目指していただけあるなと思う。
「見せてもらっていいですか?」
「いいよ。はい」
渡してあげると、彼女の大きな目がきらきらと輝いた。
「わ~、ありがとう!」
目も覚めたようで、楽しそうにノートを捲っていく。