レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
あたしは携帯を手で隠すようにして、「あはは…」と意味もなくアキトに笑いかけた。
「ちょ…ちょっとすみません」
くるっと背を向けて、なるべく声を小さくして電話に出る。
「…も、もしもし美沙子?今取り込み中で」
『残念ながら、用件は一瞬で終わるのよ』
美沙子の、困ったような、呆れたような声が耳を伝って降りてくる。
――大概、良くないことが起きるサインだ。
あたしは悪いカンだけは昔から99%の的中率を誇る。
『あなた、全然シフト入れてなかったでしょ。昨日、新しいバイトの子が来てね、かなりバリバリ働けるみたいだから店長が即採用しちゃったのよ。で…
チアは、クビだって』
「え、ええええ~っ!!????」
思わず絶叫して、携帯を落とした。
林田さんがきっとこちらを振り向き、ちょいちょいと壁を指し示す。
指の先には、「静かに」のポスター。
アキトが代わりに携帯を拾ってくれた。
「何してんだ。…あ、通話切れてる」
「…たった今、バイトを失いました」
後ろから追いついてきたケイくんたちが、あたしを取り囲む。
「ありゃ、大丈夫?」
少し傷が入ったあたしの携帯に触れて、ケイくんが眉をひそめた。
「ちゃんと動くの?」
「は…はい。なんとか…」