レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
100回のオーディションを通じて、言われてきたこと。
言われたうちはまだいいほうだった。
それも途中から学んできた。
9割近くは、歌も最後まで聴いてもらえず、あっさりと追い出された。
センス。
オーラ。
それは本人の努力だけじゃどうにもならない世界なのだと知った。
顔は悪くはないほうだと思う。
でも、美人ではない。
とびきり可愛いわけじゃない。
ママに似た丸顔、パパに似たくりっとした目。
人目を惹く容姿じゃない。
――それでも、夢を見ていたんだ。
長い夢を。
バカみたいに、華やかな夢を。
"100回まで。それが終わったら普通の高校生に戻って、ちゃんと大学受験に向けて頑張る"
ママやパパ、友達。
みんな知っていた。
"なれるわけないだろ"
"ちょっと歌が好きだからって、アイドル歌手なんか無理に決まってる"
みんな、あたしより冷静だったんだ。
それなのにあたしは気付いてなかった。
100回もある。
絶対どれかには通るだろうって、今思えばバカな自信があった。
ママは知ってたんだ。
1回でも100回でも10000回でも、結果は同じだって。
いまさら思い知るなんて…
「あああ、悔しいーーっ!!」
ぎゅっと拳を握りしめ、雨にも負けない大声で叫んだ。
ちょっと胸がすっとする。
帰りたくない。
バカにされたまま終わるなんて。
「そんなの嫌じゃごらぁぁぁぁ!!!」
雨に響く声。
後ろから水を弾く足音がするのに気付いたのは、声が完全に雨の中に消えてからだった。