レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
左右から違う香りが漂ってくる。
あたしは恐る恐る見上げた。
背の高いイケメンに挟まれて、あたしは囚われの宇宙人状態だ。
「あ、あのう…」
「そうか。嫌いか。道理で、今朝の練習もずいぶん噛み合わなかったもんな?」
しょーごさんはイヤホンを外して、アキトとまっすぐ向き合った。
アキトがふいと目を逸らす。
「俺の責任じゃない」
「3曲目。少し手抜いてたよな、特に5小節目。
ああいう形苦手だろ。一発で分かった」
アキトの華奢な肩が少し揺れた。
あたしには何のことを言ってるのかわからなかったけど、しょーごさんの指摘が細かくて絶妙なところを突いているらしいことは、雰囲気で分かる。
――険悪な雰囲気。
ワタルとケイくんも、何も言わなかった。
挟まれたあたしは、もっとどうしていいかわからない。
…困った。
ぎゅっと目を閉じた、そのときだった。
「「いてっ」」
二人の声が重なる。