レジェンドは夢のあとに【8/18完結】


厚いファイルで、二人の頭を思い切り叩いたのは、林田さんだった。




「だーかーら、時間がないから急げと言ってるだろバカ共」


「いてぇな、このクソじじい」


「何とでも言え。ステージ使える時間は限られてんだよ。喧嘩はあとでいくらでもやれ。プロ意識忘れんな」



林田さんの前では、しょーごさんも小学生並みに扱われる。

早足になった林田さんのすぐ後ろを、しょーごさんがちっと舌打ちをしながらもついていく。


「…あ」


アキトと目が合った。
…けど、なぜか背けられた。


アキトが何も言わないままスタスタと歩きだす。
長い脚で、きれいに歩いていく。




「…隅に置けないね、チアちゃんも」


取り残されたあたしに、後ろからケイくんが声をかけてきた。
…結局ケイくんとワタルと肩を並べて歩くのが、一番落ち着く。





「……な、なんか、しょーごさんもアキトも、難しいです。何考えてるのかよくわからなくて」


どっと疲れが出てきて、ため息交じりにそう言ってみた。





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