レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
「…ハイ。じゃあ一曲だけ歌っとこうか!」
――あっという間に、ステージにはスタッフが溢れ返り、あれやこれやと忙しくなった。
今回のライブに携わる人たちは、あたしがぱっと見ただけでも100人近い。
これに警備の人も加わるし、あたしが見てないところで動いている人もいるし…ものすごい人手だ。
ステージマネージャーさんに音響、照明、ヘアメイク、衣装…
あたしの出る幕なんてなくって、むしろ圧倒されて、客席の隅で小さくなっていた。
ステージの上に立って、スタッフさんからいろいろと説明を受けるしょーごさんたちが、遥か遠くに見える。
…眩しい。
「いいでしょ、この雰囲気」
彩花さんがあたしの横に着て、にかっと笑った。
なんだかほっとする。
ふう、と一息つきながら、彩花さんもステージの4人を満足そうに眺めた。
「仕事多すぎてやんなるけど、こういう臨場感がたまらないのよねぇ」
美人なのにメイクもあまり出来ていないし、髪もちゃんとセットし切れていない。
そういえば彩花さんはしょーごさんたちの専属で、いっつも走り回っている。
思い切って、聞いてみた。
「なんでこの仕事やろうと思ったんですか?」
まだ演奏は始まっていない。
スタッフさんと打ち合わせする"彼"の姿を見つめたまま、そう聞いた。
彩花さんが、手帳でパタパタと自分を仰ぎながら、こっちを見る。