レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
しん…と沈黙が流れて、はっと我に返る。
――ヤバイ。あたし。見事なまでに、やっちゃった。
…超人気アイドルを、手加減したとはいえぶん殴ってしまった。
「…お前な」
しょーごさんが怒りを通り越したのか、呆れたような目であたしを見る。
殺されるかと思ってぎゅっと目を閉じたけれど、意外と冷静な反応だった。
「そのポジティブさと自信過剰、いつか世界を殺すぞ」
そう言われたけど、不思議と引く気にはならなかった。
「な、なんとでも!」
あたしはソファーから立ち上がって、しょーごさんを見下ろした。
「…100回もオーディション落ちてればね、人に何言われても気にならなくなってくるんです!」
「まぁ、そうだろうな」
あたしは思わず目を丸くした。
――しょーごさんが、くすくすと笑っている。
堪えきれなかった笑いをこぼしている。
普通の男子高校生と何も変わらない、あどけない笑みだった。
「…わーったよ。 話聞いてやる」
しょーごさんはソファーに座り直して、背を伸ばすと、あたしを見た。