レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
夢…
ぽかんとするあたしに、おじさんは「いや」と軽く首を振って言い添えた。
「その夢を、他者に見せるためにはどんな努力も惜しまないかね?
…芸能界は確かに夢の世界だ。華やかで美しい。ただ、それは今まで君が"夢を見ていた"側の人間だったからだ。
それを、"夢を見せる"側に移す覚悟があるかね?あるならば、乗りなさい」
夢…
――長い夢を、見ていたいんだ。
それを見せたいんだ。
たくさんの人たちに。
あたしは頬に貼りついた髪を払うと、駆け出した。
迷い無く車に乗り込む。
車の中はそこまで高級ではないけど、革の匂いがした。
「…よし。出すぞ」
ハンドルに手をかけると、おじさんはくるりとこちらを振り向いた。
「そして、言い忘れていたけど」
「え?」
エンジンの掛かる音がする。
「まさか芸能人デビューとは思っていないよね?」