レジェンドは夢のあとに【8/18完結】


夢…




ぽかんとするあたしに、おじさんは「いや」と軽く首を振って言い添えた。


「その夢を、他者に見せるためにはどんな努力も惜しまないかね?

…芸能界は確かに夢の世界だ。華やかで美しい。ただ、それは今まで君が"夢を見ていた"側の人間だったからだ。



それを、"夢を見せる"側に移す覚悟があるかね?あるならば、乗りなさい」




夢…





――長い夢を、見ていたいんだ。

それを見せたいんだ。
たくさんの人たちに。





あたしは頬に貼りついた髪を払うと、駆け出した。

迷い無く車に乗り込む。


車の中はそこまで高級ではないけど、革の匂いがした。


「…よし。出すぞ」

ハンドルに手をかけると、おじさんはくるりとこちらを振り向いた。



「そして、言い忘れていたけど」

「え?」


エンジンの掛かる音がする。








「まさか芸能人デビューとは思っていないよね?」


< 17 / 226 >

この作品をシェア

pagetop