レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
…ホントに、この人は、簡単にあたしの体温を弄ぶ。
「この事務所内の誰か…か。考えたくないけど」
「あのメールの送信時刻は、アリーナ打ち合わせがあった日の、朝の8時48分になってたの」
あたしはスケジュール帳のメモを見ながら、言った。
「でね、あたしが覚えてるのは、しょーごさんと車の中でウォークマンを聞いてたとき。ウォークマンに時刻が出てたから見たんだけど、ちょうど8時45分だったんだよね。その時間だけくっきりと覚えてたの。だから、しょーごさんは絶対違うって確信してたの。…今となれば、ターゲットがしょーごさんなんだから違って当たり前だけど」
「でも、今のメール機能だったら、ふつーに時間を指定して自動送信することもできるんじゃね?」
しょーごさんが難しい顔をして言った。
「それも考えたんだけど、実はメールが編集されてて」
「編集?」
「スペシャルライブの告知メールが、編集されてたの。曲目のところに"Death"って」
説明しながら、なんだか背筋が寒くなる。
…ホントなら、もう考えるのをやめて、全部なかったことにしちゃいたい。
ただの冗談だったらいいのに。
「その編集されて保存された時刻が、8時46分。自動送信はできても、自動編集って難しくない?
だから、やっぱり誰かがその時刻に、このメールボックスにパスワードを使ってアクセスしてたんだと思うんだけど。
ややこしいけど、その人はこの事務所用アドレスを知っていただけじゃなくて、事務所専用のメールボックスにログインするためのパスワードも知ってたことになる」
「…なるほどな」
しょーごさんはため息をついた。