レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
しっかりと返事をして、あたしは林田さんに続いてスタッフさんたちへの挨拶に向かった。
――さすが4万人が集まるライブなだけあって、人手も半端じゃない。
次々と現れるスタッフさんに、顔を覚えきれないまま次々と挨拶を交わしていく。
「これは、新人の春田です」
林田さんに紹介されて、ひたすら水飲み鳥みたいに頭を下げた。
「よ、よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしく」
今回のライブ全体を取り仕切っている古川さんというおじさんは、しょーごさんたちとの付き合いがわりとあるようだった。
茶目っ気たっぷりの丸顔で、楽しそうにあたしに笑いかける。
「いや、こないだのリハで思ったんですよ。しょーごくん、なんか雰囲気丸くなったなって」
「そ…そうですか?」
「かわいらしい女の子が入ったからなんだねー。…おっと、今日はマスコミも多いから気を付けないと。壁に耳あり障子に耳ありですよ」
よく喋るおじさんで、あっという間に緊張を解いてくれた。
――でも、やっぱりどこかで気を引き締めたままの自分がいる。
林田さんと控室に戻った時に、休憩中のしょーごさんがいた。
しょーごさん一人で、机に腰かけてミネラルウォーターを飲んでいる。
「他の3人は?」
そう聞いた林田さんに、「音出し」と短く答えた。