レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
「お前だって、聞いてたらわかるだろ。あいつの才能は並外れてる。林田のおっさんだって認めてるし」
しょーごさんは至って素直に、アキトを認めていた。
…あたしとしては、少し複雑な気持ちになる。
頷いていいのか、そうでないのか。
「あいつ自身だって思ってるよ。そりゃ、ギターとベースは違うから比べようがないけど、才能の違いなんてのは認めるしかない。否定しようがない。
でも、アキトは、注意したとこは一発で直してくる。多少癖があるから意見の食い違いも多いけど、そこまで自分勝手なやつじゃない」
ただ、としょーごさんは少し暗い顔になった。
「スカウトあたりの話になると、俺には手に負えない範囲だな。特に、前の仲間がどうだったとかは、本人からは全然聞いてないし」
「そうだよね」
「そもそもあいつ、自分のこと全然喋んないだろ。チアと違って」
わ、悪かったわね。
そう言い返しながらも、あたしは前の仲間のことを考えていた。
会ったのは一回だけだし、時間だって本当に短かった。
だけど、やたらと印象深い。
「…ガラは悪かったなぁ。でも」
アキトは、「俺の唯一の友達」だと言っていた。