レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
――…と、いうわけで。
あたしは今、ここにいる。
「…」
「何だ、打ち合わせって。…手短に」
いろんな台本が頭の中にあったけれど、実際にアキトを目の前にすると…
…頭が真っ白になってしまう。
しょーごさんに言われた通り、それぞれが音出しや楽器調整をしている時間に、アキトを無人の控室に呼び出した。
なるべくさりげなさを装って、
「アキト、ちょっと打ち合わせがあるんだけど」
とスタジオに入っていったとき、我ながらあたしにも演技の才能あるんじゃないかって思った。
…だけどいざ、目の前にすると、やっぱり緊張してしまう。
ワイン色のシャツをさらりと着こなしているアキトは、静かに席についた。
緊張のあまり、あたしはアキトの目じゃなくて、首もとのネックレスに目が行ってしまう。
…クロスの、ネックレス。