レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
アキトがわずらわしそうに、もう一度振り向く。
「…今度はなんだ」
「あ…あたしのことは?」
「は?」
「あたしに何か不満とか…その、溜めてることがあれば…」
そう言うと、アキトの表情が曇った。
少しだけ、目つきが冷たくなった。
「なんだよそれ」
「いや…何もないんだったら、いいんだけど!」
「ってことは」
ゆっくりと歩み寄って、あたしに迫ってくる。
…怖い。
なんだか、目の色がさっきまでと違う。
後退りしていくと、壁にトンと背中がついた。
これ以上後ろには下がれない。
「…あ、アキトっ」
「言ったら、なんとかしてくれんの?なんでも?」
「そういうわけじゃ…」
アキトが壁に手をついて、あたしを腕の中に囲む。
――顔が近い。
すぐ上から降ってくる、しょーごさんとは違う香り。
唇を噛み締めて、ぐっと見上げると、憂いを称えた綺麗な顔立ちが目の前にあった。
…ほんの少し、切なげな表情。