レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
「あと30分で開演で~す」
ステージマネージャーの大谷さんが、楽屋に声をかけに来た。
その言葉に、全員の身が引き締まる。
「…わ、緊張する。いって、僕らの出番はあとだけど」
ワタルが目をしょぼしょぼさせた。
ケイくんは「そうだろうね。緊張するよね」と笑ったけど、全然そう見えない。
しょーごさんとアキトは特に何を言うこともなく、楽器を触っている。
あたしはその様子をじっと見つめていた。
――これで、うまくいく、と思う。
何も起きない。何も起きなかった。
そう納得したいのに、なんとなく何かを見落としているような気がしてならなかった。
あのときと同じ。
メンバー探しをしていたときと同じ。
――何かすごく重要なピースが、欠けているような気がしている。
「よし、いよいよだな!」
たくましい声とともに、豪快にドアを開けて林田さんが入ってきた。
「しっかりやれよ。特に最初のlabylinthの二人。俺とチアをがっかりさせんな」
「わわわわわっ」
あたしの肩に手を置いて、脳みそが回転するぐらいにぶんぶんと揺さぶる。