レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
ドアを閉めるときも、ステージ裏に向かって歩いていくときも、ずっと何かが引っかかっていた。
…気持ち悪い。
もやもやする。
「チア」
少し彩花さんから離れた一瞬で、林田さんが小声であたしに囁いた。
「警備いわく、何も不審物はないし不審者もいない。この前手紙にあったようなことは99%ありえなさそうだ」
「…そうですか。良かった」
「この先からは静かにお願いしまーす」
スタッフさんに言われて、あたしと林田さんも口を閉じた。
今回の演出は、静けさの中、ブルーライトに包まれて二人がステージの中央から登場するというもの。
あたしたちは特別席で鑑賞することになっていた。
「…頑張ってね」
しょーごさんとケイくんはステージ中央へ続くドアへと、姿を消した。
「チアちゃん、こっち」
林田さんと彩花さんに続いて、あたしは特別席へと続くドアを開ける。
――その瞬間、熱気が、体を覆った。
「わ…」
4万人のファン。
ライトを持ったり、うちわを持ったり、垂れ幕を持ったり。
キラキラ輝くいくつもの瞳が、ステージを待ちわびているのがすぐ近くで見える。