レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
「…で、なんで気づいたの?」
「…知りすぎてると、思ったから」
痛みも忘れるぐらい、あたしはワタルを強く睨みつけた。
「しょーごさんのことをよく知ってるのは、まだファンだったからという意味で納得してた。でもね、あたしのバイトのことまで知ってたでしょ」
…アリーナの打ち合わせのとき。
バイト先から電話がかかってきたあと、ワタルは確かに言った。
――「バイト先って、カフェですよね?」
「あたし、それは誰にも言ってなかったはず。なのに知ってるなんて、わざわざあたしのことをよく観察して調べていたとしか思えない」
「それは、やっちゃったなぁ」
ワタルはおどけたように、ナイフを持っていないほうの手で口を覆ってみせた。
「うっかり口をすべらせちゃった」
「それに、もし本当にしょーごさんのファンなら、gloomyにずっといるのはおかしいと思ったの。ブルーバードだって受けることはできたのに。…しかも実力があるのに、ずっとバンドは組まないまま。考えてみれば、不審な点が多かった」
すごいすごい。
ワタルはにこっと笑って、あたしの頭を撫でた。