レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
頬に手を当てて、ムンクの叫びのように顔を歪める。
「そ、そんなぁ…」
「これぐらいきっぱり言わないと君はわからないだろ」
「…」
「というわけで、きっぱり諦めろ」
こんなにきっぱり言われたのは初めてだった。
…いや…
初めて、でもないか?
今までだって、遠回しにそう言われてきたような気もしなくはない。
絶望に暮れるあたしにはお構いなしに、林田さんはポンと肩を叩いた。
「そう絶望することはない」
「なっ……じゃ、なんであたしをこんなところに連れてきたんですか!からかうにも程が!」
「からかうほど暇な人間じゃねぇよ、俺は」
林田さんの穏やかだった口調が崩れた。
呆れた顔であたしを見下ろしたまま続ける。
「いいから話を最後まで聞け」
「…」
「俺はね、見つけてやったんだ」
「何をですか」
「あんたに合う歯車を、だよ」
林田さんの黒い後ろ姿がゆらりとポスターに歩み寄った。
さっきあたしが歩み寄った、labyrinthのポスター。
アップになった本多省吾…"しょーごさん"の、あの挑戦的な眼差しが相変わらずこっちを見ている。
林田さんはそのポスターを勢いよく剥がして、あたしに叩きつけるかのように目の前に突き出した。
「こいつが売れることを、千愛、お前は知っていただろう」