レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
思わず、息を呑んだ。
瞬きさえ出来なかった。
――どうしてこの人は、それを知っているんだろう…
喉まで出かかった言葉を、今はとりあえず呑み込む。
そして一呼吸置いてから、ゆっくりと、頷いた。
「知ってました。知ってたというか…
予想してました」
2、3年前か。
あたしが中学生の時だ。
今はlabyrinthのヴォーカルでドラマ出演もしつつある本多省吾…彼は、ガムのCMに出ていた。
エキストラに近いようなものだった。
数秒だけ映る男子高生3人のうちの真ん中で、一言だけ何かを喋る。
その喋っていた何かは覚えていない。
ただ、あの時あたしは思った。
――この人は有名になる。
一瞬だけ何かを喋った声を聴いて、思った。
――いい声。
歌を歌えばいいのに。
思うだけじゃなくて、言ったりもした。
その時まだ彼は無名だったから、CMを必死に教えた。
みんな笑って聞き流した。
「チアがまた何か言ってるよ」
って。
だけど。