レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
彼は、大都会のTVの中に舞い降りた。
本多省吾、という名前と共に。
「チア」
「…っ!?」
「チア、という女の子が3年前に俺と同じ電車の中で話をしていた」
林田さんは微笑みながら、腕組みをしたまま続けた。
目を逸らすことが出来なかった。
「彼女は友達に力説してた。ガムのCMの真ん中の男の子が売れるって」
「…」
「俺は正直、ミーハーなだけの女子中学生の話になんて興味はない。ただ、ちらりとそいつを見たら、その目は他の奴らとは違ってた」
「…え」
「俺と同じだ。
…見抜く、目だ」
あたしの目に突き立てるかのように、指を差し出した。
あたしは瞬きひとつせずに、その乾いた指先を見つめる。
――見抜く、目?
「そしてチアの目は、俺よりいいものだ。
俺はその目を何故か信じて、そのガムの男の子に声を掛けた。
まだ他の事務所にも全然捕まっちゃいなかったし、業界仲間は俺を笑った。たいしたことない拾いモンだってな。しかし」
林田さんの口角が、きゅっと上がった。