レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
「おつかれーしょん」
そう爽やかに言って、ドアを開く。
その次の瞬間、あたしの好きな声が部屋に飛び込んできた。
香水の仄かな匂いとともに。
「全くだよオッサン。仕事詰めすぎ」
「しょーごは明日も雑誌の撮影だよね」
「ホントだよ。ケイ、お前代われ」
2人のやり取りが聞こえて、思わず肩が跳ねた。
入ってきた2人がやれやれとした顔をふとこちらに向けると、途端に怪訝そうな表情になった。
先に入ってきてた方が、あの、挑戦的な眼差しをこっちに向けた。
「…誰?」
程よい長身。
少し明るめの茶髪だけど、端正な顔立ちがチャラさを無くしている。
形のいい唇がそう動いた。
「今日のお前があるのはこいつのおかげなんだよ」
「…は?」
あたしの肩を叩きながらそう笑った林田さんに、"しょーごさん"は首を捻った。
その肩から顔を出して"ケイくん"が微笑んだ。
「よくわからないけど、林田さんが連れて来たんならよっぽどの方なんですね。…水野圭太です。よろしくお願いします」
とても礼儀よく頭を下げてくれた彼に思わず頬が緩んで、あたしも頭を下げた。