レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
…あたしかい!
いきなり話を振られて、人生で初めて「ぎゃふん」と言った。
「というわけで、ドラムとベースを調達しろ。チア」
「いやいやいや、あなた何言ってるんですか!」
「もちろん、ビジネスだからギャラは払う」
必死で抵抗しようとしたけれど。
涼しい顔のまま林田さんが続けた言葉に、ぴたっと手が止まった。
ギャラ。
そのカタカナ文字が頭の中で踊った。
――今、お金に困ってる。
仕送りがあるとはいえ、通信制の高校とはいえ、オーディション受けまくりながらのバイトはきつい。
それに、100回目のオーディションが終了した時点で両親からの仕送りはストップすることになっている。
そしたらアパートも追い出されて…
「なんなら事務所に寝泊まり、というか住み込んでもいい」
あたしの心が読めるのか。
エスパー林田は、ぐいぐいっと押してくる。