レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
ふぁい?
あくびを残した状態で間抜けな声を上げると、林田さんがドアに手を掛けながら言った。
「帰っても帰らなくてもいいけど、明日までに、さっき言ったバンドの候補者を決めろ」
「…は?明日までですか!?」
「ギャラ払うって言ってるんだ。仕事はテキパキしてもらわなきゃな」
今日1日でいきなりそこまで話を持っていかれるなんて…
唖然とするあたしをよそに、ケイくんもソファーから立ち上がった。
「僕もそろそろ帰ります。今日の仕事はおしまいだし、明日はまた収録だし」
えっ…ケイくんまで。
ちょっと、1人にしないでよ!
ここで寝てもいいと林田さんは言うけれど、今日は雨に打たれたままの服や髪だし、一度は家に帰りたい。
「あ、あたしも帰りますよ!」
そう慌てて言うと、林田さんがドアノブに手を掛けたまま、デスクの上のファイルを指差した。