レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
なんというのか、ホント、神様って不公平だ。
今日1日で痛感したこと。
「お疲れ様」
ケイくんはそれ以上は特に何も言わず、事務所を出て行った。
仕方ない。
あたしだって、早く帰りたい。
デスクに歩み寄ってファイルを手に取った。
ソファーに座ると、膝の上に開いてパラパラとめくる。
写真とプロフィール、そして演奏のCDが丁寧にファイリングしてある。
めんどくさいな。
開く前はそう思っていたのに、そんな気持ちは一瞬で消えていた。
頭の中に、カチリとスイッチが入ったような気がした。
――あたしの中に
スイッチがあるなんて。
自分でも知らなかった。
しょーごさんの美声と、ギター、誰もがすぐに覚える独特のメロディー。
ケイくんのキーボードと、繊細な歌詞。
それを再生して、2人のルックスを思い浮かべる。
無我夢中でファイルを開いたまま、何度もCDを再生していた。