レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
「林田さんの命令を受けたからです…」
徹夜して候補者を決めたあと、夜明け前にあたしは自分で髪をバッサリ切った。
そして近くのドラッグストアに買いに走ったスプレーを使って、黒に泡染めした。
ショートの黒髪。
コンタクトを外したからメガネ。
一気に真面目ちゃん風貌になったあたしを見て、しょーごさんは爆笑した。
「どんだけ素直なんだよ」
「でもそっちの方が似合ってるよ。清楚な感じで可愛い」
朝早くに事務所に戻ってきたケイくんが、編曲で疲れた目をこすりながら笑いかけてくれた。
そう言われると一気に疲れも吹き飛ぶ。
「そうかぁ?今どきこんな真面目スタイル」
バカにしたように笑うしょーごさん。
もうファンなんかじゃない。
絶対に、ファンなんかじゃない!
「すみませんね、地味で…」
そう言いながらメガネを外そうとした手を、しょーごさんが掴んだ。
し、
心臓が、跳ね上がる。
「…っ!?」
掴まれた手を思わず引っ込めると、しょーごさんの整った顔がすぐ目の前にある。
――何故に。
いつの間に、かがみこんでいたんだ。