レジェンドは夢のあとに【8/18完結】


しょーごさんは、自分の出てる番組を観るのは苦手らしく、不機嫌そうな顔を相変わらずしかめたままだった。

「TV消せよ、おっさん」

「やなこった」

林田さんの涼しい表情に舌打ちする姿は、やっぱりTVと同一人物とは思えなかった。


…大丈夫か。
なんでこの人は常にこんな不機嫌なんだ。

会ったばかりの憧れのアイドルに対する印象の劇的な変化とか、
自分が決めてしまったメンバーが登場することへの恐怖とか、
もう意味がわからない。
意味がわからないけど、きっとこの人がもっと不機嫌になるであろうことはなんとなく予想がついた。


…あたしが好きで決めたわけじゃないのに。

ちらりと林田さんの横顔を見た。
しょーごさんじゃないけど、このおっさんは一体何を考えているんだろう。

早くこの意味不明な事務所から帰って、シャワーを浴びて寝て、またオーディションを受けたい。
歌手がダメならいっそ芸人を目指してみようか。

またそんなことを考えていた矢先に、ドアをノックする音がした。



ドアの近くにいたあたしには聞こえたけど、TVを見ている三人は気付いていないようだった。


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