レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
季節はいつの間にか夏から秋に移り変わろうとしていた。
道を歩くミュールが踏む葉は、秋の色に変わりつつある。
「…♪」
ハミングしながら歩く。
大都会のど真ん中。
忙しそうに行き交う人達の間をすり抜けて歩くと、ふと電光掲示板に目が行った。
高層ビルの中心にはめ込まれるようにして活き活きと光るTV。
適当なCMが流れていた中、ぱっと明るくなる。
人々の視線が心なしかそっちに向かった気がした。
そして、
――あたしが今ハミングしていた曲が大音量で流れ始めた。
同時にアップになる美青年2人の顔。
「あ、labyrinthだ」
「いいよね〜最近結構出てきてるよね」
女の子たちやOLたちの華やいだ声を背中に、あたしはそれに合わせて口を小さく動かした。
君の優しさが
こんなにも嬉しいのに
こんなにも痛くて
「想いは彷徨う切ないlabyrinth…」