レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
「…これ、新曲の歌詞ですか?」
午前6時、早朝の事務所。
机の上に置いてあった、一枚の紙に気づいた。
ノートの切れ端だけど整った綺麗な字が書かれている。
いかにも、ケイくんらしい字だ。
「あー…それね」
反応してソファーから起き上がったケイくんは、少しだけついた寝癖を撫でながら苦笑した。
柔らかな黒髪は、寝癖でぴんと跳ねていても、やっぱりかっこいい。
朝4時頃に来て、少し作詞してから休んでいたらしい。
今日はlabyrinthとしての最初の(そして最後の)アルバム打ち合わせがあると聞いた。
そのアルバム発表と同時にlabyrinth解散と新グループを発表、そして新グループ初の曲披露。
ビッグニュースを重ねるという大変ハードなスケジュールだった。
…もちろん、林田さん提案。
おかげで二人はずいぶん忙しそうだった。
もちろんあたしは新グループに責任があるし、ワタルはダンスレッスンを詰め込まれている。
「もうバンドという呼び方は古い。唄って踊れるアイドルグループにするんだ」
林田さんは完全な改革を計ってるようだった。
――ただ、最後のメンバーが決まらない。大事な"ベース"。
それが決まらないことにはずっと頭が痛い。
「その歌詞、さっきふと思いついて少し書いてみたんだ。アルバム用になりそうかな」
「…さっき、ですか?」
こんなのがすぐに書けちゃうのか。
あたしは思わず目を丸くした。
……やっぱり、プロは違う。