レジェンドは夢のあとに【8/18完結】
あたしはぐっと涙をぬぐうと、再びマイクを口元に持っていった。
審査員のうち一人が、また聞いた。
「曲のジャンルは?」
「ラヴ・バラードです」
「タイトルは?」
「白いナミダ」
それでは聴いてください。
そうマイクを握る手に力を込めた、
が…
「ハイ、お疲れ様でしたー」
次の瞬間には体がふわっと浮き上がり、誰かに引きずられていた。
そしてポイッと部屋の外に捨てられた。
床に転がってはっと顔を上げると、審査員とは違う、スタッフらしい男の人が満面の笑顔であたしを見下ろしていた。
「お疲れサマ。まっ、人生頑張ってね」
「なっ…まだタイトルしか言ってないのに!」
「タイトルセンスからして全てアウトだよ。じゃあね」