鳥籠の中の少女
私は家に帰ってきて部屋に入り、鞄を置いてベッドにダイブした。

疲れた。

今日は今までに無いほど話したから疲れた。

それ以上にあの時、彼が耳元から離れた時、笑ってた。

唯人みたいに優しく笑ってて、唯人の面影すら見えた。

よく考えたら、彼の容姿と唯人の容姿はすごく似てる。

なんで、最初に見たい時に気付かなかったのだろうか。

それだけ、時が流れたと言う事?

それだけ、私の中で唯人と言う存在が消えつつあると言う事?

違う、違う。

唯人が死んでからまだ、数年しか経ってない。

それなのに、それなのに!


「忘れる訳ないよ、馬鹿」


誰に言う訳でもなく、零した言葉は部屋に響いて消える。


「やだやだ、忘れたりなんかしない」


また、瞳から大きな水が落ちてくる。


「最悪だ」
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