鳥籠の中の少女
「何?」



私のハンカチで涙を拭きながら答える沙良ちゃん。



「生きててくれてありがとう」



沙良ちゃんは、涙を拭く手を止めて、私を見据える。



「何度も死にたいと思いながらも、生きててくれてありがとう」



もう1度言った私に目を見開いて、抱きついてきた。



「うん!緋結ちゃんも生きててくれてありがとう。緋結ちゃんに会えて、沙良は幸せ者だよ」



沙良ちゃんの言葉に一筋の雫が流れる。



1番言ってほしかった言葉。



ずっと、心の奥底で求めていた言葉。



私は何度、みんなに勇気づけられた事だろう。



私こそ、幸せ者だ。



「緋結は、今まで、苦しんだからだよ。こんなに良い人達に恵まれるのは。あたしだって、緋結が生きててくれてよかったんだから」



愛璃が泣くのを耐えながら言う。



愛璃は私の心も見透かすのね。



私は沙良ちゃんからそっと、離れた。



それに合わせて、沙良ちゃんも離れてくれる。



「それを言うなら、私の方だと思うわ。愛璃は放火で、お父さんと兄と姉と弟を亡くしてるでしょう?愛璃と愛璃のお母さんは丁度出掛けてたから、死ななかった。愛璃が生きてて、あの時、私は泣いたんだから」



「そうだね。でも、桜花アウトレットパーク殺人事件のときだって、あたしもテレビの前で泣いてたんだから」



< 112 / 230 >

この作品をシェア

pagetop