鳥籠の中の少女
私達はその声に振り返って、その声の主の名を呼ぶ。



「潤樹」



「樋渡君」



「2人共早いね」



潤樹はいつもの満面の笑みで言う。



でも、瞳は悲しそうだった。



「潤樹もね」



「俺もあの場所に傷があるからね」



ポツリと呟いた言葉。



私達は逃さなかった。



「どうして、樋渡君が?」



愛璃が不思議そうにする。



「ははっ.....2人が傷ついてる姿をみてるのが嫌だからだよ。それが傷」



潤樹は笑って、意味を説明する。



でも、その瞳は尚も悲しそうだった。



私も愛璃も気付いたけど、敢えて何も言わなかった。



聞かれるのを恐れてるみたいだったから。



「そうなんだ。樋渡君、優しいね」



「そんな事無いよ。それより、名字で呼ばなくて良いよ。潤樹でいい」



「じゃ、あたしも愛璃でいいよ」
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