鳥籠の中の少女
大動脈を切った男の首から大量の血が飛び散って、地面は赤黒く光って、紅い血の海なったんだった。



--バタッ



そのまま男は倒れて、息を引き取った。



私はその光景を目の前にして、驚きを隠せなくて、唯人もこのまま死ぬんじゃないかと怖くなったのを覚えてる。



『ひ....ゆ.....』



先程以上に辛そうな唯人が一生懸命私の名を呼んでくれて.........



『どうしたの?唯人』



『おれ.....し....ぬか...も...』



苦しそうにしながらも、〚ははは....〛と乾いた笑いを洩らす唯人に涙が止まらなくなったんだった。



『そんな事あってたまる訳ないでしょ!?私の事幸せにしてくれるんしょ!?死ぬかもなんて言わないで!!』



唯人の服にポタポタと流れる涙は、大雨の様に流れ、唯人の服に染みを付けた。



『だっ.....て....おれ....もう....や....ばい...し...』



そのか細い声を消すように、ピーポーピーポーと救急車のサイレンが響いていた。あの時の私にとって、あの音が唯人をもう少しで助けてくれると思ってた。



『もう少しで救急車来るから。だから、生きて!』



『.....ひ...ゆ...』



『何?どうしたの?あまり話さないほうがいいわ』



『.....あい....して...る....』



最後にニコッと微笑んで、目を閉じた。あの言葉が私の耳を焼き付ける。



それを見た私は、目を見開いた。



『いやああぁあああぁぁあぁああぁあ!!!!!』



そう叫んで、もう息をしていない唯人を思いっきり抱きしめた。
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