鳥籠の中の少女
嗚呼、ダメだ。

目を瞑るとまた浮かんでくる。

唯人は狡いよ。

唯人は夢で会っても笑顔で、写真の中でも笑顔で、目を瞑って浮かんでくる姿も笑顔なんだよ。

もう、抱きしめてくれないし、私の頭を撫でてもくれないし、口すらも聞いてくれない。

なのに、何時までも私の中で大きなままで、唯人との思い出無しじゃ、息を吸う事すら出来ない。

躯が海の中で沈んでいって、息をしようにも出来なくてもがくようなそんな感じになるんだと思う。

だからこそ、苦しくても唯人との思い出は忘れたくない。

私には忘れる事の方が苦しいことをよく知っている。

でも、此処までの絶望を教えてくれたのも唯人。

君が死んでから気付いたの。

それぐらい、私にとって大事な存在だったって。

希望であって、絶望でもある唯人は私を見たらなんて言うのかな?

死んじゃった唯人には文句も言えないんだよ.......

おかしくなった私は、唯人を思い出しては泣いて、戯れ言を零してしまう。

そんなモノ要らないのに。

要らない、いらない、イラナイ。

だって、人形の私には必要ない。


「飲み込んでしまえば、また人形になれる」


それだけ呟いて、私は眠りに落ちた。


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