鳥籠の中の少女
「私のお父さんは昔、子供の頃に長期の虐待を受けていたわ」



「虐待?それと事件と何の関係が?」



「関係あるわ。その虐待でお父さんは精神的な病気になった」



「精神的な病気?」



愛璃は聞いた事の無い言葉に戸惑ってる。



「ええ、小さな頃に受けた長期の虐待から逃げるように違う自分を作りだしたらしいの。その痛みとか悲しみとか恐怖とか絶望とか全てのマイナスエネルギーを糧にして、1つの人格を作ってしまったらしいの」



「緋結のお父さんにそんな病気が?緋結のお母さんは知ってたの?」



「知ってたわ。それでも結婚した。お母さんはお父さんに出会った頃、会社内で虐められていたの」



「緋結のお母さんが!?」



愛璃は次々と分かっていく真実に驚きを隠せていない。



でも、私は淡々と説明した。



「そんな頃にお父さんと出会ったお母さんはお父さんの優しさに救われた。でも、そのお父さん精神的な病気を持っていた。そんなお父さんをお母さんは自分にしてくれたように助けたいと思ったらしいわ」



私は、お母さんに教えられた時を思い出しながら、丁寧に説明した。



「それで結婚した。お父さんは洋祐と言う基本人格と祐次【ユウジ】と言う人格、暁人【アキト】と言う人格を持っていた」



「その祐次と言う人格と暁人と言う人格はどんな人格だったの?」



「お父さんの基本人格は明るくて優しくて、誰からも好かれる人。祐次と言う人格はその基本人格とは正反対で臆病で引き籠り。暁人はクールで真面目」



「それぞれ、全然違うんだね」



「ええ、でも、一応治療もしてて安定してた。基本人格がちゃんとコントロールしてたから。でも、ある日、コントロール出来なくなった」
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