鳥籠の中の少女
其処で初めて、愛璃は一筋の涙を流した。



「緋結のお父さん、本当に良い人だったんだね。緋結のお母さんと緋結の為に出ていくなんて」



「良い人じゃなくて馬鹿よ。その後、お父さんは何度も自殺しようとしたらしいから。でも、出来なかった。それが、ある日、本当に自殺しようと思った」



「それが事件の日?」



「そうよ。死ぬ前によく家族3人で行った、あのアウトレットパークに行きたかったって。その後、近くにビルから落ちるつもりだったらしいわ」



「つもりってどういう意味?」



「アウトレットパークに来る前に家に寄ったのよ。そして、家のポストに駅のロッカーの鍵と手紙を入れた封筒が入ってた」



愛璃は耐えられなくなったらしく、嗚咽を出しながら、泣いた。



でも、私は素知らぬ顔をして、続きを話した。



そうじゃないと、私まで泣きそうだったから。



「手紙には私達の事を今でも愛してると言う事が書いてあった。そして、今から、死ぬと言う事も。ロッカーにはお父さんの宝物と言ってたものがあったわ。それは、家族写真。箱の中にお父さんが持ってる写真、全部入れてあった」



「本当に.....緋結の.....お母さん....と....緋結は.....愛されて....たん...だね.....」



詰まりながら話す愛璃は私の事を軽蔑した瞳で見てない。



「でも、最悪の結果になったけどね。アウトレットパークに行ったお父さんは第4の人格が出てきて、人を殺した。そして、娘に恨んだ瞳で見られながら、自殺した」



「.......うっ.......うっ........」



愛璃は黙って泣いている。



「これで話は終わり。どう?軽蔑したりしないの?」



私は冷静に言った。
< 167 / 230 >

この作品をシェア

pagetop