鳥籠の中の少女
「正しい答えなんて無いと思うぜ。どれも、間違ってないし、正しくもない」



「楼大、意味分かんない」



「じゃ、潤樹がもし、潤樹の姉を思って、緋結を恨んで生きていく事にする。この時に得るものと失うものはなんだ?」



楼大の問いに、俺は慎重に答える。



「得るものは、家族との信頼関係。姉を思う気持ち。失うものは、緋結との信頼関係。緋結の周りにいる人達との信頼関係」



「ま、1番大きいのはそれだな。じゃ、自分の気持ちに素直になって、緋結の事は恨まないで生きていくとしたら?」



「今言った、答えの逆」



「だろ?どちらにしても、何かは失わなければならない。それは全部大切なモノの筈。それなのに、正しい答えなんてあるのか?」



確かに楼大の言う通りだ。



正しくもないし、間違っても無い。



どちらも、表し方として不適切だ。



頭の中で整理しているうちに、楼大は続きを話した。



「だから、後悔しない道を選べって言ってるんだ。どちらを失ったら、より後悔するか?よく考えるんだな」



楼大が俺の部屋を出ようと、扉を開けようとした時にポツリと呟いた。



「楼大、いつの間にか、頼もしくなっちゃったね」



その声は聞こえていて、楼大は笑顔で振り返った。



「これは、全部、潤樹と銀木を見てて学んだ事だ。潤樹の方がよっぽど、頼もしいな。俺なら、前を向く事なんて出来ないだろうから」



それだけ、言って、楼大はこの部屋を去った。
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