鳥籠の中の少女
--ガチャン



玄関の扉が閉まる音がする。



暫くして、ポツリと呟いた言葉。



「強くなったわね。潤樹」



潤樹のお母さんは微笑ましそうに笑う。



「私が悲しかったのは、こんな辛い選択をして、前に進んだら、私から遠のいてしまうような気がしたから」



誰もいない廊下に声は響く。



「潤樹、貴方がどんな答えを出したかは分からない。でも、貴方が選んだ答え。だから、私は何も言わないわ」



決心した瞳で今、出掛けて行った息子を近くにいるかのように言っている。



「どんな結果になろうとね」



それだけ言って、潤樹のお母さんは、くるりと踵を返す。



スリッパの音を立てながら、リビングに行き、リビングの扉が閉まった。



静寂に満ちた廊下。



其処にはいろんな想いが渦巻いていた。



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