鳥籠の中の少女
神社に着くと、人でごった返していた。



「人多いね」



「あ、潤樹は今年来たばかりだから知らないんだね。いつも、此処のお祭り、人多いんだよ」



愛璃が丁寧に説明してくれた。



「そうなんだ」



「それより、祭りを楽しもうぜ?」



「神賀、はしゃぎ過ぎ。夏祭りぐらいではしゃぐなんて、子供ね」



緋結が楼大に冷たい視線を向ける。



が、今の楼大には聞こえてなかったようで、何も言い返して来ない。



俺と愛璃は、その光景に苦笑した。



「さあ、中に入ろう?」



俺の言葉を合図に、俺達は中に入った。



その中は、騒がしいけど、笑顔の光に溢れていた。



笑顔のおじさんが小さな子供にリンゴ飴を渡している光景。



子供が金魚すくいを一生懸命頑張って、取れた時の輝く笑顔を微笑ましく、母親が見ている光景。



俺達と同じぐらいの年のカップルが幸せそうに、手を繋ぎながら、笑顔で、歩く光景。



みんなが笑顔だった。



そんな中を歩いて行くと、自然と俺達も笑顔になれた。


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