鳥籠の中の少女
「抱え込んで無いなんて言わせない。現に今、緋結は泣いてる」



いつのまにか、流れていた一筋の雫。



それに気付いた途端、潤樹が右手で私を抱き寄せる。



「泣い....てなん....かない....」



「緋結は強がりだね。大丈夫だよ。緋結は1人じゃない」



潤樹の言葉がストンと胸に収まる。



どうして?



私は感情なんてもの失くした筈なのに。



なのに、潤樹の前では.......



潤樹の前では感情が露わになる。



私がおかしくなる。



でも、心地よくて、私が飢えていたものを潤樹がくれるようで。



「1人が......怖い....の.....でも....また.......大事な....人が出来....たときに失....うのが....怖..くて」



震えながら紡ぐ言葉達は泡の様。



それでも、集めて拾ってくれる潤樹は優しく語りかける。



「大丈夫。緋結の中で唯人さんは生き続けてる。緋結の心は忘れてないでしょ?」



私は黙って頷く。



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