鳥籠の中の少女
ナイフを持った男は直ぐにナイフを抜いた。



ヌルッという嫌な音を立てながら。



そして、ブルブルと震えながら後ずさった。



終いにはナイフを落とす。



其処には先程まで狂乱して、人を殺していた男の姿は無かった。



「唯人!唯人こそ大丈夫なの?」



「ははは.....大.....丈....夫に....決まっ....てん...だろ....」



そう言いながら、ピースサインをする唯人。



でも、その手は今にもだらんと落ちそうだった。



「大丈夫じゃないじゃない!」



私は泣きながら、もう立ってられなさそうな唯人を抱きかかえながら座り込んだ。



背中に空いた穴からドロドロと生ぬるいモノは流れていく。



その間にも犯人の男はブルブルと震えながら、後ずさり、ブツブツと呟いていた。



「俺....が...刺....したの...か....?...この...周....りの....人...達も...?」



「そうよ!貴方が唯人を......周りの人達を刺したのよ!!」



私は泣きながらも、憎しみを込めた瞳で睨む。



それで、全部を理解したような表情をする男は叫んだ。



< 56 / 230 >

この作品をシェア

pagetop