鳥籠の中の少女
「唯人....は...私を...庇い...亡く....なったの.....」



涙が止まらない私は詰まりながら話した。



「あの事件の被害者の鹿路 唯人さんが緋結の恋人だったんだ」



「知っ......て....るん....だ...」



「あの事件は大々的にと上げられていたからね」



「そう....ね.....」



私は尚も泣き続け、潤樹の制服を濡らしてしまった。



どうして、泣いてるんだろう。



私、唯人の死から感情を失くして泣けなかった筈なのに......



潤樹といるとおかしくなる。



私の計画通りに進まない。



何より、失くしたと思っていた感情が蘇ってくる。



暫くして、大分落ち着いてきて、涙は止まっていた。



「ごめんなさい。もう大丈夫だから」



私はお礼を言って、潤樹から離れた。



「謝らなくていいよ。緋結の苦しみ全部受け止めるから。もう1人で抱え込まなくていいんだよ?」



「ダメよ。私が殺したようなものだもの。ナイフを持ってる男がいるのに飛び出した私を庇って死んだのだから」



「それは唯人さんの為でしょ?唯人さんが心配だったんでしょ?だから、出来た行動。他の人は真似できないと思うよ?」



「でも、それが裏目に出た。全ては結果。結局、私は唯人を殺したの」



私は優しく諭してくれる潤樹の言葉を否定し続けた。


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