鳥籠の中の少女
「はい。どうぞ」



テーブルにクッキーと、私の前にレモンティーが置かれる。



唯人のお母さんはブラックのコーヒーのようだ。



「ありがとうございます」



私はお礼を言って、レモンティーを一口飲んだ。



「緋結ちゃん、誰かに唯人の事話した?」



唯人のお母さんが言った言葉に私は驚いた。



でも、表情には出なかったようだ。



笑うとか驚くとか怒るとか全然してなかったから分からないわ。



「やっぱりそうなのね」



表情に出なかった筈なのに、唯人のお母さんには分かったみたい。



「何で分かったんですか?」



私が尋ねると、唯人のお母さんは微笑んだ。



「緋結ちゃんの瞳が変わったから。今までは死んだような瞳をしてたのに、今日は色を持った瞳をしてる」



「私、そんなに分かりやすいでしょうか?」



「そんな事無いわよ。緋結ちゃんの事を知らない人が見たら、悲しそうな瞳してるって思うわ。でも、私は緋結ちゃんの事、ずっと見てきたからね」



唯人のお母さんは本当に嬉しそうに、でも、今までの私の事を悲しむように笑った。



「私は幸せになって良いのでしょうか?一生懸命に生きてもいいのでしょうか?」



「それは緋結ちゃんの心の中で決まってるでしょ。その色を持った瞳が言ってるわ」



図星を言われてしまった。



でも、本当に良いの?


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