鳥籠の中の少女
◆◆◆



「何で、朝泣いてたの?」


授業も終わって帰ろうした所に、また聞いてくる彼。

朝からずっと聞いてくる。


「さあ?何でだろうね?」

「はぐらかさないで」

「何で、今日会った初対面の人に其処までしつこく言われなきゃいけないの?」

「そ、それは......」


悔しそうな顔をして下唇を噛む樋渡君。

こういう時、優しい人なら罪悪感とか感じるのだろうか。

私はどうでもいいんだけど。


「じゃ、帰るから。もう、聞いてこないでよ」


私は鞄を持って、教室を出た。

でも、階段を下りて昇降口に来た時止まった。

理由は簡単、私の通り道を邪魔する人がいたから。


「樋渡君、何でいるの?」

「さっきの答えを言わないとと思って」

「そんなのどうでもいいし」


通り過ぎようとしたら樋渡君に腕を掴まれて、動けなくなる。


「どうでもよくない」


あまりにも真剣な顔で言う彼。

聞かなきゃ帰らせてくれなさそうにないから聞く事にした。


「聞くから手を離して」


彼は手を離して、私の正面に立つ。

そして、おかしな事を言い出した。


「緋結ちゃんの事が一目惚れしちゃったんだ」


< 8 / 230 >

この作品をシェア

pagetop