毎日がカレー曜日
金持ちは壺がお好き
前略~インドの国から
朝、事務所のドアを開けると。
「おはようございます」
そこは── インド料理店だった。
立ちのぼる香辛料の匂いと、こんがりよく焼けた肌を持つ女は、ズルズルした見慣れない衣装を着ている。
孝輔は、とんでもないその光景に、呆然と口を四角におっぴろげていた。
ここは、兄の経営する事務所のはずだ。
従業員は、自分ひとり。
昨日までは確かにそうだった。
「焼きたてのナンです」
いかがですか?
バスケットから飛び出すほど大きなパンを差し出される。
にっこり微笑む唇からこぼれる歯の、白いこと白いこと。肌の色の対比もあいまって、眩しいほどだ。
「あ、いや、あの、あんた……」
まだ、完全に魂を取り戻せないまま、孝輔は何とかそこまで言葉を紡ぐ。
「お、孝輔、きたか~」
奥のデスクを隠すパーテーションの向こうから、見知った顔が出てくる。
にこやかな茶髪メガネ。
「アニキ!」
バスケットを横に押しやるようにして、孝輔は一気に男までの距離を詰めた。
少なくとも、そこのインド娘よりは、得体が知れている相手だ。
そして、この現状の理由を、一番よく知っている相手でもあるだろう。
「何やらかした! これはなんだ!? あの女は一体誰だ!?」
兄を見てほっとするどころか、逆に一気に頭に血が上ってしまった。そのせいで、いかに自分が失礼な表現を使っているかにも気づないまま、インド娘に指をつきつけた。
ゲインッ!
「サヤちゃんに失礼だろうが! このボケ弟がぁ!」
おかげで、兄の熱い鉄拳制裁が下されることになったが。
「おはようございます」
そこは── インド料理店だった。
立ちのぼる香辛料の匂いと、こんがりよく焼けた肌を持つ女は、ズルズルした見慣れない衣装を着ている。
孝輔は、とんでもないその光景に、呆然と口を四角におっぴろげていた。
ここは、兄の経営する事務所のはずだ。
従業員は、自分ひとり。
昨日までは確かにそうだった。
「焼きたてのナンです」
いかがですか?
バスケットから飛び出すほど大きなパンを差し出される。
にっこり微笑む唇からこぼれる歯の、白いこと白いこと。肌の色の対比もあいまって、眩しいほどだ。
「あ、いや、あの、あんた……」
まだ、完全に魂を取り戻せないまま、孝輔は何とかそこまで言葉を紡ぐ。
「お、孝輔、きたか~」
奥のデスクを隠すパーテーションの向こうから、見知った顔が出てくる。
にこやかな茶髪メガネ。
「アニキ!」
バスケットを横に押しやるようにして、孝輔は一気に男までの距離を詰めた。
少なくとも、そこのインド娘よりは、得体が知れている相手だ。
そして、この現状の理由を、一番よく知っている相手でもあるだろう。
「何やらかした! これはなんだ!? あの女は一体誰だ!?」
兄を見てほっとするどころか、逆に一気に頭に血が上ってしまった。そのせいで、いかに自分が失礼な表現を使っているかにも気づないまま、インド娘に指をつきつけた。
ゲインッ!
「サヤちゃんに失礼だろうが! このボケ弟がぁ!」
おかげで、兄の熱い鉄拳制裁が下されることになったが。