毎日がカレー曜日
 今回の依頼人は──財閥の総帥にして、陶磁器の収集家でもあった。

 70という年齢のせいか、ひげも髪も真っ白だ。

 絶対夜は、分厚いガウンを着て、ブランデーグラスを揺らしながら、毛足の長そうな外国猫を撫でているに違いない。

 それが、孝輔の第一印象だった。

 先についていた直樹と、玄関先で既に談笑モードだ。

 その側に、サヤが控えている。

 うひー、デケェ。

 絵に描いたような大豪邸だった。

 自慢のアコードワゴンから大仰な機材を降ろそうとすると、すぐさまホテルのボーイみたいな男たちが台車を押して手伝ってくれる。

 この屋敷の使用人だろう。
 おかげで、孝輔は楽ができた。

「それじゃ、さっそく案内しようかの」

 機材の搬入の様子を見た主は、彼らを中へといざなった。

 大きな階段が目の前に広がっている。

 2階に台車をどうやって上げるのかと思えば、裏にエレベーターがあるという。

 孝輔は一人、機材と一緒に裏へと回った。

「幽霊騒ぎってひどいの?」

 業務用エレベータに、二人の使用人と一緒に乗り込んだ彼は、単刀直入に聞いてみた。

 直樹への依頼料は決して安くない。
 この大金持ちが、どういうルートから、兄に仕事を依頼しようと思ったのかは知らないが、普通は何件か断られた末に話を持ち込まれることが多いのだ。

 それほど手に負えない霊なら、ここで働いている人間が知らないはずがない。
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