毎日がカレー曜日

 男は二人顔を見合わせた。

 何とも言えない表情だ。

「見た、といいますか…なんというか」

 怪奇現象を、うまく説明できる一般人は少ない。

 怖い思いをした、という事実が大前提にあって、どう怖かったのかなどは、きちんと記憶してないのだ。

 せいぜい、大きい物音がしたとか、白い影が見えたとか。

「行ってご覧になればすぐお分かりいただけると思いますが…その…ずっと、あの部屋にいるんです」

 ずっといる?

 彼らの言葉は、すぐに証明されることとなった。

 機材と共に、『その部屋』にたどりついた孝輔は、兄とサヤの背中を見て足を止めたのだ。

 いや。

 その背中の、もっと向こうにあるもの。

 大きく、きらびやかな壷だった。

 その上に、何か座っている。

 市松人形のような着物の少女だった。

 霊を、こんなにはっきりと見たのは初めてだった。

 兄同様、孝輔にも霊感はない。

 その彼でさえ、普通の人間と変わらないほどに見えるのだ。

 ただ。

 ほんの少しだけ、向こう側が透けているような気がする。

 それが、普通の人間とは違うところ。

「あの壷を買った日から、ああしてずっと座っているんでな」

 買った時はおらんかったのにと、主人は、苦々しく言葉を紡ぐ。

「しかし、ただ座っているだけなら、悪影響もなさそうですね」

 ハハハハハ。

 さすがは、霊感のまったくない兄。

 なんと、ずかずかと着物少女に近づくと、その身体めがけて手を伸ばしたのだ。
< 14 / 53 >

この作品をシェア

pagetop