毎日がカレー曜日
 あれは手袋の姿をしているが、本当はハンディセンサーなのだ。

 幽霊がどこにいるかさえはっきりしていれば、そこで直接空間の歪みやひずみを感知することができる。

 もちろん、孝輔が操作する端末とリンクさせなければ、ただのカッコツケ手袋なのだが。

 ハンディ用の小型端末のスイッチを入れ、無線リンクを確立する。

 おけ、と──視線だけで、兄に準備完了の合図を送った。

「それじゃ、ま」

 ぴっ、ぴっ。

 直樹の手の動きにあわせて、ディスプレイの色が変化していく。

 サヤの理解できない、デジタルな世界。

 手袋の手が、少女の霊をなぞる。

 R値が、高いエリアだ。

 R値とは、霊の出現能力を現す。

 これが高ければ高いほど、たくさんの人が目撃することになる。

 ここまではっきり見えているのだから、R値が高いのは当たり前だろう。

 が。

 気になることがあった。

 S値が、ほとんど感じられないのだ。

 こちらは、霊の存在を維持する力。『思念』とでも言うべきか。

 霊は、何らかの意図があって、そこに残っていることが多い。

 それが強ければ強いほど、霊の存在が強くなる。これは、人に見えようが見えまいが関係のない強さだ。

 S値の強い霊が、一般的に厄介な霊と言われている。

 だが、R値が高くS値が低い霊など、いままで孝輔は見たことがなかった。逆なら山ほど見てきたが。
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